医療保険(6)~高額療養費について~
高額療養費とは
病院を受診した時の自己負担額は医療費の3割になるなど、医療保険によって私たちの医療費負担は軽減されています。しかし、大きな手術を伴う入院をした場合など、自己負担額がかなり高額になってしまうケースもありえます。このような場合に、自己負担額が大きくなりすぎないようにする給付が高額療養費です。所得の応じた1か月あたりの限度額を超えて自己負担が発生した場合は、その限度額を超えた分が払い戻しされます。
高額療養費は70歳未満か70歳以上かで異なってきます。まずは、70歳以上の場合についてみていきたいと思います。
70歳以上の高額療養費(外来分)
70歳以上で標準報酬月額が28万円未満の場合、毎月1日から末日までの外来での医療費の自己負担額が18,000円を超えると超えた分は高額療養費として払い戻しされます。なお、18,000円を超えるかどうかは被保険者、被扶養者別々に医療費を合算して判断されます。例えば、73歳の被保険者が同一月に、A病院で10,000円、B病院で20,000円を支払い、71歳の被扶養者(被保険者の妻)がC病院で10,000円支払った場合、被保険者の医療費の合算のみが18,000円の基準額を超えるため、(10,000+20,000)-18,000=12,000円が高額療養費として払い戻しされます。なお、自己負担の上限額18,000円は住民税非課税など低所得の場合は、8,000円になります。
また、1年間(8月1日から翌年7月31日まで)の自己負担の上限額が144,000円となっています。
70歳以上の高額療養費(世帯合算)
上で紹介した外来の高額療養費には入院分の医療費については含まれていないので、入院した場合は自己負担が高額になってしまう可能性があります。そのような場合の自己負担を抑える仕組みが世帯合算の高額療養費です。所得によって、世帯合算(被保険者と被扶養者の分を合算)の自己負担限度額が以下のように定められています。
- 標準報酬月額:83万円以上
- 自己負担限度額:252,600円+(医療費-842,000円)×1%
- 標準報酬月額:53万円以上83万円未満
- 自己負担限度額:167,400円+(医療費-558,000円)×1%
- 標準報酬月額:28万円以上53万円未満
- 自己負担限度額:80,100円+(医療費-267,000円)×1%
- 標準報酬月額:28万円未満
- 自己負担限度額:57,600円
- 低所得者(住民税非課税)
- 自己負担限度額:24,600円
- 低所得者(年金収入80万円以下など)
- 自己負担限度額:15,000円
また、同一世帯で合算するといっても共働きでそれぞれが別々に医療保険に加入している場合、高額療養費の算定の際は別の世帯として扱い、世帯合算はできません。
例えば、標準報酬月額が83万円の73歳の被保険者の一か月の医療費が100万円(自己負担:30万円)、71歳の被扶養者の医療費が50万円(自己負担:15万円)の場合、自己負担限度額は252,600円+(1,500,000-842,000)×1%=259,180円になります。そのため、自己負担額の合計45万円との差額190,820円が高額療養費として払い戻しされます。
70歳未満の高額療養費(高額療養費)
70歳未満の場合も、70歳以上と同様に所得に応じて自己負担の上限額が決められています。その金額は低所得者の部分を除いて同じになっています。
- 標準報酬月額:83万円以上
- 自己負担限度額:252,600円+(医療費-842,000円)×1%
- 標準報酬月額:53万円以上83万円未満
- 自己負担限度額:167,400円+(医療費-558,000円)×1%
- 標準報酬月額:28万円以上53万円未満
- 自己負担限度額:80,100円+(医療費-267,000円)×1%
- 標準報酬月額:28万円未満
- 自己負担限度額:57,600円
- 低所得者(住民税非課税)
- 自己負担限度額:35,400円
70歳未満のケースで70歳以上と大きく異なるのは自己負担としてカウントする医療費の範囲です。同一病院での1か月の自己負担額が21,000円以上のもののみをカウントします。また、同じ病院でも外来と入院、医科と歯科の医療費は別々にカウントします。
例えば、標準報酬月額が53万円の被保険者のA病院での入院分の医療費が100万円(自己負担:30万円)、B病院での外来の医療費が5万円(自己負担:15,000円)、被扶養者のC病院での外来の医療費が10万円(自己負担:3万円)の場合、自己負担が21,000円を超えるA病院、C病院の医療費のみが高額療養費を計算するための基礎となります。この場合、自己負担限度額は167,4000円+(1,100,000-558,000)×1%=172,820円になります。そのため、高額療養費は自己負担33万円から172,820円を引いて157,180円となります。
多数回該当の場合の高額療養費
また、長期間にわたる病気の治療のため、毎月のように医療費負担が大きくなるケースが考えられます。そのような場合の医療費負担を軽減するための仕組みがあります。1年間のうち、高額療養費が3回(3か月)以上支給されている場合、4回目以降は自己負担の上限額がさらに抑えられ、負担が少なくなります。
- 標準報酬月額:83万円以上
- 自己負担限度額:140,100円
- 標準報酬月額:53万円以上83万円未満
- 自己負担限度額:93,000円
- 標準報酬月額:28万円以上53万円未満
- 自己負担限度額:44,400円
- 標準報酬月額:28万円未満
- 自己負担限度額:44,400円
- 低所得者(住民税非課税)
- 自己負担限度額:24,600円 (※)
(※)70歳以上の低所得者については、そもそもの負担限度額が24,600円以下なので、多数回該当の適用はありません。
最後に協会けんぽのホームページに70歳未満の場合の高額療養費を簡易計算するページがありますので、ご紹介しておきます。