雇用保険(3)~教育を受ける場合の給付~

 


本記事では、失業している方が職業訓練を受けたり、会社で仕事をしながら自己啓発・スキルアップのために教育を受ける場合に、雇用保険からどのような給付を受けられるかを紹介します。

失業している方が職業訓練を受ける場合の給付

 失業している方が再就職するために、新たにスキルを身に着けることが有効になる場合があります。そのような場合のスキルアップを支援するために、公共職業訓練が提供されています。ハローワークの指示で公共職業訓練を受けるという認定がされると、訓練に通っている期間、失業しているときの給付(基本手当)に加えて、交通費など訓練受講のための給付が合わせて支給されるようになります。

なお、訓練の受講にあたっては、テキスト代を支払う必要はありますが、教育受講の費用(学費)は無料です。おおむね3か月から2年の教育が提供されており、保育士などの資格を取得するための訓練や人手不足のITなどに関するスキルを身に着けるための訓練があります。

給付の種類

公共職業訓練を受講する際に関係する給付として以下があります。

  • 受講手当
    • 訓練受講日のうち、失業に伴う基本手当を受給している日について、合計で40日を上限に1日あたり500円の受講手当が支給されます。職業訓練が実施されない休日にはこの手当は支給されません。
  • 通所手当
    • 公共職業訓練を受けるためには、その訓練を実施している専門学校等まで自宅から通う必要があります。その通学のための交通費が通所手当として支給されます。
    • 公共交通機関を利用して通学する場合の毎月の給付上限は42,500円です。
    • 車を利用して通学する場合の給付上限は毎月8,010円です。
  • 寄宿手当
    • 公共職業訓練を実施している場所に自宅から通うには時間がかかり厳しい場合は、単身赴任のような感じで、同居の家族から離れて訓練実施場所の近くにしばらく滞在する場合があります。そのような場合の費用の一部が寄宿手当として支給されます。
    • 支給金額は月額10,700円です。

なお、失業しているときの手当(基本手当)の日数には上限が決められていますが、職業訓練を受ける場合、受講期間、受講開始日までの期間、受講終了後から1カ月の間、延長して基本手当を受給できる仕組みもあります。 

 仕事をしながら教育訓練を受ける場合の給付

 近年、学び直しやリスキリングという言葉をよく聞くようになりました。終身雇用制度の時代から、スキルやライフプランに応じて転職したり副業したりという方も増えてきていると思います。ただ、新しい知識を自力で学ぶのは難しいのではないでしょうか。勉強のためのモチベーションアップという意味では、通学講座や通信講座を使うという方法もありますが、費用が高くてなかなか踏み込めない方もいるかもしれません。

雇用保険には費用面でスキルアップを応援する仕組みがあります。通学講座や通信講座でスキルアップにつながる講座を受講するとその費用の一部を補助してくれます(※1)。

(※1)短期間に複数回の費用補助を受け取ることはできません。

 教育訓練の種類

 まずは教育訓練には大きくどのような種類があるかを紹介します。

  • 一般教育訓練
    • 以下で紹介する特定一般教育訓練、専門実践教育訓練に該当しない教育訓練です。
    • 具体的には、IT、英語などの入門資格を取得するための教育などがこちらに分類されます。
  • 特定一般教育訓練
    • キャリアアップにつながる効果が高いスキルを身に着けるための教育訓練です。
    • 具体的には、大型自動車免許などの資格取得やITなどデジタル関連の資格取得のための教育などがこちらに分類されます。
  • 専門実践教育訓練
    • 上記教育と比較してより専門的で中長期的なキャリアアップにつながるスキルを身に着けるための教育訓練です。
    • 具体的には、MBAなどの専門職大学院の学位や社会福祉士などの資格取得のための教育などがこちらに分類されます。

具体的にどのような教育があり、上の3つの教育訓練のうちどれに分類されるかは厚生労働省が提供している検索システムから探すことができます。

(参考)厚生労働省の教育訓練の検索システム 

https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/SCM/SCM101Scr02X/SCM101Scr02XInit.form

教育訓練の給付を受けるための条件

給付対象となっている教育を受講した場合に給付を受けるための条件は以下になります。

  • 教育訓練の受講開始日に会社に在職しており、雇用保険に加入していること
    • 雇用保険に加入していたが、離職した場合は、離職後1年以内(※2)であること
  • 前回教育訓練を受講して給付を受けた場合、前回の受講開始日以降3年以上雇用保険に加入していること
    • はじめて教育訓練を受講した場合は1年以上雇用保険に加入していること
(※2)出産や育児などの事情がある場合、1年以内という条件が最大20年以内となることがあります。

教育訓練の給付を受けるための流れ

 一般教育訓練とそれ以外の教育訓練の場合で流れが少し異なります。

  • 一般教育訓練の場合
    • 教育訓練を受講して修了後、1カ月以内に申請書、修了証明書などの必要な書類を持ってハローワークに行って申請します。
  • 特定一般教育訓練、専門実践教育訓練の場合
    • 教育訓練の開始1カ月前までにハローワークでキャリアコンサルティングを受けて受給資格の確認を実施します。
    • 講座を受講、修了後、1カ月以内に申請書、修了証明書などの必要な書類を持ってハローワークに行って申請します。

教育訓練の給付額

 教育訓練の給付額はその種類によって異なります。訓練ごとに以下のようになっています。

  • 一般教育訓練の場合
    • 教育訓練にかかった費用の20%(ただし、上限10万円)
      • ただし、給付額として計算した金額が4000円未満の場合は支給されない
  • 特定一般教育訓練の場合
    • 教育訓練にかかった費用の40%(ただし、上限20万円)
      • ただし、給付額として計算した金額が4000円未満の場合は支給されない
  • 専門実践教育訓練の場合
    • 教育訓練にかかった費用の50%(ただし、1年間で上限40万円)
      • ただし、給付額として計算した金額が4000未満の場合は支給されない
    • さらに、教育訓練修了後、1年以内に、その訓練で決められた資格を取得し、かつ、雇用保険の被保険者として雇用された場合(または、すでに雇用されている場合)、追加給付の20%が給付され、トータルで70%が支給されます(ただし、1年間で上限56万円)

 

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