雇用保険(4)~定年後働く場合や育児・介護休業を取得したときの給付~
本記事では、定年後に働く労働者向けの給付や育児休業、介護休業で休む方向けの給付について紹介します。
定年後に働く労働者向けの給付
現在、多くの企業が60歳で定年となっていますが、定年後、嘱託社員として同じ勤務先で働く方が増えてきています。ただ、定年後は給料が大きく下がるケースが多く、労働者の生活が苦しくなってしまう場合もあります。このような場合に、給料の減少分の一部を補填する仕組みが雇用保険にあります。これを高年齢雇用継続給付といいます。
受給要件
- 60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者であること
- ただし、日雇労働者や季節的に雇用される労働者を除く
- 5年以上雇用保険の被保険者であること
- 60歳時点で5年に満たなかった場合でも60歳以上の被保険者期間と合わせて5年になればその時点で条件を満たす
- 60歳到達前6カ月の平均給与と比較して60歳以後の給与が75%以下に低下していること
給付額と期間
高年齢雇用継続給付の金額は60歳以後の給与の最大15%です。60歳以降で上の条件を満たしたときから65歳になるまで受給することができます。
60歳時点の給与と比較して61%以下なら最大の15%もらえます。61%を超えて75%未満の場合は0%~15%までの間で支給されます。
定年後に別の会社に再就職した場合の給付
定年後、同じ会社で働き続けるのではなく、いったん退職して求職者給付(失業した場合の基本手当)を受給して別の会社に再就職するケースも考えられます。この場合も、60歳時点の給与から再就職先での給与を大きく下回る状態であれば雇用保険から給付が支給されることがあります。これを高年齢再就職給付金といいます(※1)。
(※1)再就職は60歳以後の必要があります。
受給要件
高年齢再就職給付金を受給するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 退職前に5年以上雇用保険の被保険者であること
- 再就職の前日時点で、失業にあたって受給している基本手当の受給残日数が100日以上あること
- 安定した職業についたこと
- 前職を離職する前6カ月の平均給与と比較して60歳以後の給与が75%以下に低下していること
給付額と期間
高年齢雇用継続給付と同様に最大で再就職後の会社での給与の15%です。
基本手当の残日数が200日以上の場合は2年間、残日数が100日以上200日未満の場合は1年間受給できます。ただし、途中で65歳を迎えた場合、その月で支給がストップされます。
育児休業を取得する場合の給付
受給要件
- 1歳未満の子供を養育するために育児休業を取得していること
- 1歳時点で子供を預ける保育所が見つからなかった場合、1歳6カ月まで延長されます。それでも保育所が見つからない場合は2歳まで延長されます。
- 育児休業を開始する前2年間の間に仕事をした日(賃金が発生する日)が11日以上または月間勤務時間が80時間以上の月が12カ月以上あること
- 育児休業前の2年間にケガなどで30日以上働けなかった期間がある場合は2年間という条件が最大で4年間まで延長されます
- 育児休業中の、各1カ月のうち就業した日が10日以下、または月間勤務時間が80時間以下であること
- (有期雇用の方のみ)子供が1歳6カ月に達するまでの間に契約期間が終了しないこと
給付額と期間
育児休業開始後180日までは、原則、育児休業開始前6カ月間の平均給与の67%です。181日以降は67%から50%に下がります。なお、育児休業期間中に会社から一定以上の給与が支払われている場合は、育児休業給付金の額は低下または支給されなくなります。
介護休業を取得する場合の給付
両親などの親族を介護するために一時的に介護休業を取得して会社を休む方もいます。このような場合も会社から給与が支払われなくなるケースが多いので、休業中の労働者の生活を支えるために雇用保険から給付が支給されます。これを介護休業給付金といいます。
受給要件
- 対象の家族(配偶者、父母、子、祖父母、孫、兄弟姉妹、配偶者の父母)を介護するために休業したこと
- 介護休業を開始する前2年間の間に仕事をした日(賃金が発生する日)が11日以上または月間勤務時間が80時間以上の月が12カ月以上あること
- 介護休業前の2年間にケガなどで30日以上働けなかった期間がある場合は2年間という条件が最大で4年間まで延長されます
- 介護休業中の、各1カ月のうち就業した日が10日以下、または月間勤務時間が80時間以下であること
- (有期雇用の方のみ)介護休業開始後93日経過する日から6カ月以内に契約期間が終了しないこと