雇用保険(5)~再就職を促進するための給付~
本記事では、再就職を促すために雇用保険が提供している給付について紹介します。
再就職した場合の給付
失業に伴って基本手当を受給している方が、安定した職業に就いた場合、基本手当の受給は終了しますが、代わりに再就職手当という給付がもらえます。
受給要件
再就職手当を受給するためには以下のすべての要件を満たす必要があります。
- 離職後に離職票などの書類を持ってハローワークに行ってから7日間(待期期間)以上経過してから就職したこと
- 就職する日の前日時点で基本手当の支給日数のうち1/3以上が残っていること
- 離職前の会社に再度雇用されたわけではないこと
- 7日間の待期期間満了後1カ月以内に就職した場合は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介で就職したこと
- 1年を超えて勤務することが確実な職業に就いたこと、または、事業を開始した方については自立できると認められること
- 再就職先で雇用保険の被保険者になること
- 過去3年以内に再就職手当か常用就職支度手当(下で紹介します)を受給していないこと
- 離職後に離職票などの書類を持ってハローワークに行った時点で採用が内定していないこと
給付額
再就職手当の額は基本手当の受給日数がどれだけ残っているかで異なります。
- 受給日数が2/3以上残っている場合
- 基本手当の日額×支給残日数×70%
- 受給日数が1/3以上2/3未満残っている場合
- 基本手当の日額×支給残日数×60%
再就職したが給与が低下した場合の給付
基本手当をもらっている方が再就職した場合には再就職手当を受給できるということを紹介しました。その再就職先が離職前の会社より給与が安いというケースも考えられます。この場合、低下した給与の一部が雇用保険から給付されます。これを就業促進定着手当といいます。
受給要件
就業促進定着手当を受給するためには、以下のすべての条件を満たす必要があります。
- 再就職手当を受給したこと
- 再就職手当受給の対象となった会社に6カ月以上雇用保険の被保険者として勤務していること
- 再就職後6カ月の給与から求めた1日あたりの賃金が、離職前の会社での1日あたりの賃金よりも低いこと
給付額
就業促進定着手当の給付額は以下の通りです。
- (離職前の会社での1日あたりの賃金(※1)-再就職先での6カ月の給与から求めた1日あたりの賃金)×賃金支払いとしてカウントする日数(※2)
(※1)この賃金額には上限額、下限額があるので、実際の賃金とは異なる場合があります。
(※2)月給制の場合は1か月の日数(4月なら30日)です。なお、支給額の上限は「基本手当の日額×支給残日数-再就職手当の額」です。
常時雇用されたわけではないが仕事をした場合の給付
上で紹介した再就職手当では1年を超えて勤務すると確実な仕事に就くことが給付条件の一つでした。しかし、基本手当を受給している方がアルバイトなどで期間限定で働く場合もあります。そのような場合に支給される給付が就業手当です。
受給要件
就業手当を受給するためには以下のすべての条件を満たす必要があります。
- 就業日の前日時点で基本手当の支給日数が1/3以上、かつ、45日以上残っていること
- 再就職手当の対象とならない職業に就いたこと、または、事業を開始したこと
- 離職後に離職票などの書類を持ってハローワークに行ってから7日間(待期期間)以上経過してから就職したこと
- 7日間の待期期間満了後1カ月以内に就職した場合は、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介で就職したこと
- 離職前の会社に再度雇用されたわけではないこと
- 離職後に離職票などの書類を持ってハローワークに行った時点で採用が内定していないこと
給付額
就業手当の給付額は以下の通りです。
- 基本手当の日額×就業日×30%
就職が困難な方が就職した場合の給付
就職する日の前日時点での基本手当の支給日数の残りが1/3未満の時は再就職手当の条件を満たしません。しかし、障害者などの就職することが困難な方が就職した場合には支給残日数が1/3未満でも雇用保険から給付が支給されます。これを常用就職支度手当といいます。
受給要件
- 離職後に離職票などの書類を持ってハローワークに行ってから7日間(待期期間)以上経過してから就職したこと
- 離職前の会社に再度雇用されたわけではないこと
- ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介で就職したこと
- 1年以上勤務することが確実な職業に就いたこと、
- 再就職先で雇用保険の被保険者になること
- 過去3年以内に再就職手当か常用就職支度手当を受給していないこと
- 離職後に離職票などの書類を持ってハローワークに行った時点で採用が内定していないこと
給付額
常用就職支度手当の給付額は以下の通りです。
- 基本手当の支給残日数が90日以上の場合、90日未満だが所定給付日数が270日以上の場合
- 基本手当の日額×90×40%
- 基本手当の支給残日数が45日以上90日未満の場合(基本手当の給付日数が270日以上の方を除く)
- 基本手当の日額×支給残日数×40%
- 基本手当の支給残日数が45日未満の場合(基本手当の給付日数が270日以上の方を除く)
- 基本手当の日額×45×40%
就職のために引っ越しする場合の給付
今住んでいる場所で仕事が見つからないため、場合によってはハローワークで紹介された他地域の仕事に就き、就職のために引っ越しをするケースもあると思います。このような場合に雇用保険から引っ越しのための手当が支給されます。これを移転費といいます。
受給要件
移転費を受給するためには以下のすべての条件を満たす必要があります。
- 雇用保険の受給資格者であること
- 待期期間(7日間)が経過したのちに就職または職業訓練を受けること
- ハローワークまたは職業紹介事業者が紹介した職業に就くため、またはハローワークに指示された公共職業訓練を受けるために引っ越しすること
- 引っ越し前の家から就職先の会社または訓練実施施設まで往復するのにかかる時間が4時間以上であること
- 就職先から引っ越しのための手当が支給されないこと、または支給額では引っ越し代が賄えない場合
給付額
- 交通費(鉄道、船、飛行機、車の運賃)
- 移転料(一緒に暮らす親族の有無や引っ越し先までの距離によって異なる)
- 着後手当(一緒に引っ越す親族の有無や引っ越し先までの距離によって異なり38,000円~95,000円)
遠隔地に面接を受けに行く場合の給付
ハローワークの紹介で済んでいる地域から離れた場所まで面接など就職活動に行くケースもあると思います。この場合の交通費や宿泊費が雇用保険から給付されます。これを広域求職活動費といいます。
受給要件
広域求職活動費を受給するためには以下のすべての条件を満たす必要があります。
- 雇用保険の受給資格者であること
- ハローワークに紹介された求人が遠隔地にあること
- 雇用保険の手続きを実施しているハローワークから求人先を管轄するハローワークまでの鉄道などでの移動距離が200km以上であること
- 求人している会社から面接のための交通費が支給されないこと、または支給額では交通費、宿泊費を賄えない場合
- 待期期間や職業紹介を拒否したことにより給付制限期間がある場合にはその期間を経過していること
給付額
- 交通費(鉄道、船、飛行機、車)
- 宿泊費(400km以上離れている場合)
短期の教育訓練を受ける場合の給付
ハローワークで職業指導を受けた結果、就職するためには教育訓練(1カ月未満の短期のもの)を受ける必要があるとなった場合、その受講にかかる費用の一部が雇用保険から支給されます。これを短期訓練受講費といいます。
支給要件
短期訓練受講費を受給するためには以下のすべての条件を満たす必要があります。
- 教育訓練を受ける前にハローワークで職業指導を受けていること
- 職業指導を受けた日において雇用保険の受給資格者であること
- 待機期間経過後に教育訓練を受講し始めたこと
給付額
短期訓練受講費の給付額は教育訓練にあたって負担した金額の20%(上限10万円)です。
就職活動のために保育サービスを利用する場合の給付
子供を育てながら就職活動をしたり教育訓練を受ける場合は、子供を保育所などに預ける必要があります。この場合の保育サービスの利用にかかる費用の一部が雇用保険から給付されます。これを求職活動関係役務利用費といいます。
支給要件
- 保育サービスを利用した日に雇用保険の受給資格者であること
- 待機期間経過後に保育サービスを利用したこと
- 面接や職業訓練の受講のために保育サービスを利用したこと
給付額
求職活動関係役務利用費の支給額は以下の通りです。
- 保育サービス利用にかかった費用×80% (1日あたりの上限6,400円)
