年金保険(8)~厚生年金保険の給付 パート2~
遺族厚生年金
遺族厚生年金は被保険者が亡くなったときに、配偶者や子供などの遺族に支給される給付です。では、どのような場合に給付を受けられるのでしょうか。
遺族厚生年金を受給するための要件
遺族厚生年金を受給するためには、亡くなった方は以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
a. 厚生年金保険の被保険者が亡くなった場合
b. 厚生年金保険の被保険者であった方が、厚生年金の被保険者であったときに初診日がある傷病によって、その初診日から数えて5年以内に亡くなった場合
c. 障害等級1級または2級に該当する障害厚生年金の受給権者が亡くなった場合
d. 老齢厚生年金の受給権者(保険料を納付した期間および、一部または全部免除された期間をすべて足して25年以上である場合)が亡くなった場合
このうち、a, bの場合は死亡日の前日時点で、保険料を納付した期間または免除された期間が国民年金加入期間(20歳以上)の2/3以上あることが必要です。この条件を満たしていない場合でも、令和8年4月1日までは、死亡した方が65歳未満、かつ、死亡日の前日時点で、死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料の未納がなければ条件を満たします。
遺族厚生年金を受給できる人
遺族厚生年金を受給できる遺族は亡くなった方に生計を維持されている(※1)配偶者、子、父母、孫、祖父母です。このうち、妻以外は年齢などの要件が定められています。
- 受給要件
- 子、孫の場合
- 18歳になる年の3/31までにある方、または、20歳未満で障害等級1級または2級にある方
- 結婚していないこと
- 夫、父母、祖父母の場合
- 55歳以上の方
- 遺族厚生年金を実際に受給できるのは60歳からです。
(※1)生計維持と認められるためには、対象者が亡くなった方と同一生計であり、将来にわたって850万円以上の収入があると見込まれないことが必要です。
遺族厚生年金の給付額
遺族厚生年金の給付額は以下となります。
- 平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間の月数×3/4
ここで、被保険者期間の月数が300に満たないときは300として計算します。また、例外として5.481という割合が変更になる場合もあります。
中高齢寡婦加算
厚生年金保険の被保険者の夫が亡くなった場合、18歳未満の子供がいる妻には遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が支給されます。しかしながら、子供が18歳の3/31を迎えると遺族基礎年金が支給されなくなるので、年金額が減ってしまいます。妻自身の国民年金がもらえる65歳までその減少分を補填するための仕組みが中高齢寡婦加算です。中高齢寡婦加算が支給されるためには、夫が亡くなった時点で、以下のどちらかの条件を満たす必要があります。
- 40歳以上65歳未満である
- 40歳に達した時点で、夫により生計維持されていた18歳到達年度末までの子供がいること(子供の障害等級1級、2級の場合は20歳未満)
- この条件を満たすと40歳時点では遺族基礎年金をもらっていることになります
中高齢寡婦加算の額は遺族基礎年金の金額の3/4です。40歳から65歳までの間受給できますが、遺族基礎年金をもらっている場合は受給できません。子供が18歳到達年度末を迎えて遺族基礎年金をもらえなくなったら中高齢寡婦加算がもらえるようになります。
経過的寡婦加算
中高齢寡婦加算が上乗せされた遺族厚生年金を受給している方が65歳になると中高齢寡婦加算がなくなり、自分の老齢基礎年金をもらえるようになります。しかしながら、昭和31年(1956年)4月1日以前に生まれた方の場合、中高齢寡婦加算の額より老齢基礎年金の額が少なくなり、トータルの年金受給額が減少する事態が起こりえます。年金受給額が減らないように、遺族厚生年金に経過的寡婦加算が上乗せされて支給されます。経過的寡婦加算の額は以下の通りです。
- 中高齢寡婦加算の額-(老齢基礎年金の満額×生年月日で決まっている割合(※2))
(※2)0から348/480の間で決められています。
特別支給の老齢厚生年金
現在は老齢基礎年金・老齢厚生年金がもらえるのは65歳からですが、以前は60歳でした。法改正によって年金がもらえる年齢が変更になった際、生年月日が1年違うと受給年齢が5年変わってくると影響が大きいので、その影響を抑えるために経過的措置が導入されました。それが特別支給の老齢厚生年金です。特別支給の老齢厚生年金には報酬比例部分(老齢厚生年金相当)と定額部分(老齢基礎年金相当)の2種類があります。その金額は例外的に異なるケースはありますが、以下の通りです。
- 報酬比例部分
- 平成15年3月以前の平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入期間の月数+平成15年4月以降の平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入期間の月数
- 定額部分(令和4年度)
- 1,621円×生年月日によって異なる率×被保険者期間の月数
まずは60歳から年金がもらえるケースを見てみます。
(a) 男性と公務員・私立学校教職員の女性:昭和16年(1941年)4月1日以前に生まれた場合
(b) 民間企業勤務の女性は昭和21年(1946年)4月1日以前に生まれた場合
昭和16年4月2日生まれ以降は、まず定額部分の受給開始年齢が65歳まで1年ずつ遅くなっていきます。以降では(a)のケースのみ記載します。(b)のケースは(a)に+5年すれば求められます。
- 昭和16年(1941年)4月2日~昭和18年(1943年)4月1日生まれ
- 報酬比例部分:60歳から、定額部分:61歳から
- 昭和18年(1943年)4月2日~昭和20(1945年)年4月1日生まれ
- 報酬比例部分:60歳から、定額部分:62歳から
- 昭和20年(1945年)4月2日~昭和22年(1947年)4月1日生まれ
- 報酬比例部分:60歳から、定額部分:63歳から
- 昭和22年(1947年)4月2日~昭和24年(1949年)4月1日生まれ
- 報酬比例部分:60歳から、定額部分:64歳から
- 昭和24年(1949年)4月2日~昭和28年(1953年)4月1日生まれ
- 報酬比例部分:60歳から、定額部分:65歳から
昭和28年4月2日生まれ以降は、報酬比例部分の受給開始年齢も65歳まで1年ずつ遅くなっていきます。
- 昭和28年(1953年)4月2日~昭和30年(1955年)4月1日生まれ
- 報酬比例部分:61歳から、定額部分:65歳から
- 昭和30年(1955年)4月2日~昭和32(1957年)年4月1日生まれ
- 報酬比例部分:62歳から、定額部分:65歳から
- 昭和32年(1957年)4月2日~昭和34年(1959年)4月1日生まれ
- 報酬比例部分:63歳から、定額部分:65歳から
- 昭和34年(1959年)4月2日~昭和36年(1961年)4月1日生まれ
- 報酬比例部分:64歳から、定額部分:65歳から
- 昭和36年(1961年)4月2日生まれ以降
- 報酬比例部分:65歳から、定額部分:65歳から