年金保険(7)~厚生年金保険の給付 パート1~
老齢厚生年金
厚生年金保険の給付のうち、最も身近なものが老齢厚生年金です。65歳になるともらえる年金になります。では、どのような場合に給付を受けられるのでしょうか。
老齢厚生年金を受給するための要件
厚生年金保険の被保険者である期間が1か月以上必要です。ただし、老齢基礎年金を受給するための要件を満たしている必要があります。老齢基礎年金を受給するための要件については、以下の記事で解説していますので参照してみてください。
老齢厚生年金の給付額
老齢厚生年金の受給額は被保険者時代に保険料を多く納めたほど多くなります。保険料は給料(標準報酬月額、標準賞与額)によって決まり、給料が高いほど保険料も高くなります。老齢厚生年金の給付額は以下となります(※1)。
被保険者であった全期間の平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者の月数
(※1)加入期間がすべて平成15年(2003年)4月以降だった場合の給付額です。平成15年3月以前に加入期間があった場合は、計算式が変わってきます。
給付額は人によって大きく異なるので、自分の給付額の目安を知りたい方は、マイナポータルやねんきんネットから確認してみてください。
また、一定の条件を満たした場合、上記の給付額に加給年金がプラスされることがあります。
- 加給年金をもらうための条件
- 厚生年金保険の加入期間が20年以上の方が、65歳になったとき(※2)に生計を維持している以下条件を満たす配偶者または子がいること
- 配偶者:65歳未満
- 子:18歳到達年度の末日に達していない(1級、2級の障害を持つ場合は20歳未満の子)
- 加給年金の金額(令和4年度)
- 配偶者:223,800円
- 子:223,800円(2人目まで)、74,600円(3人目以降)
(※2)65歳未満でも生年月日によっては条件を満たす場合があります。
なお、配偶者が65歳になった場合、子が18歳年度の末日を迎えた場合(1級、2級の障害を持つ場合は20歳になった場合)、加給年金はもらえなくなります。
老齢厚生年金の繰上げ・繰下げ支給
老齢厚生年金の給付をもらえるのは老齢基礎年金と同様に原則65歳からになりますが、人によっては60歳で仕事をやめたので早めに年金を受け取りたい人や、65歳を過ぎても仕事をして収入があるので年金を急いで受け取らなくてもよい人がいます。このような人たちのために繰上げ・繰下げ支給の制度があります。
- 繰上げ支給
- 60歳から65歳になるまでの間に繰上げて老齢厚生年金を受け取ることができます
- ただし、繰上げた月数1か月につき0.4%受け取れる年金が減額されます。
- 60歳で受け取り始めた場合、24%減額された年金を受け取ることになります。
- 老齢厚生年金を繰上げする場合、老齢基礎年金も同時に繰上げする必要があります。
- 繰下げ受給
- 66歳から75歳までの間のタイミングで老齢厚生年金の受給申請をすると、その翌月から年金を受け取ることができます。
- 繰下げた月数1か月につき、0.7%受け取れる年金が増額されます。
- 75歳で受け取り始めた場合、84%増額された年金を受け取ることができます。
- 老齢基礎年金は同時に繰下げる必要はありません(老齢厚生年金だけ繰下げることができます)。
障害厚生年金
障害厚生年金は、一定の障害状態にある場合にもらえる年金になります。障害基礎年金と比較して軽度の障害でも給付をもらうことができます。
障害厚生年金を受給するための要件
障害基礎年金を受給するためには以下の条件を満たす必要があります。
- 障害の原因となった病気やけがについて初めて医師等の診察を受けた日(初診日)に厚生年金保険の被保険者であったこと
- 障害認定日(障害の状態を定める日。初診日から1年6か月経過時、または、それ以前に症状が固定された場合はその日)に障害等級表(※)の障害1級、2級または3級に該当すること
- 初診日の前日の時点で、初診日がある月の前々月までの被保険者期間(20歳以降の期間)の中に、国民年金の保険料を納付した月、一部または全部の保険料が免除された月が2/3以上あること
- 令和8年4月1日前なら、上記要件を満たしていなくても初診日の前日の時点で、初診日がある月の前々月までの1年間に保険料未納の月がなければ条件を満たしたものとする
(※)障害等級表は日本年金機構のホームページで公開されています。
障害厚生年金の給付額
障害等級1級、2級、3級それぞれの場合の障害厚生年金の給付額は以下の通りです。老齢厚生年金と同様に被保険者時代の給与によって異なります。
- 障害等級1級
- 平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間の月数×125/100+配偶者加給年金額
- 障害等級2級
- 平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間の月数+配偶者加給年金額
- 障害等級3級
- 平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間の月数
なお、被保険者期間の月数が300か月に満たない場合は300か月として計算します。配偶者加給年金額については、老齢厚生年金の加給年金額(配偶者)と条件、金額ともに一緒です。
老齢厚生年金とは異なり、子の分の加給年金は加算されません(条件を満たした場合、障害基礎年金の方で加算されます)。
次回は、パート2として遺族厚生年金などの給付について紹介します。