労災保険(2)~どのような給付があるのか~
医療費についての給付
労災と認定されたケガや病気を治療するために、病院に行って診察を受けたり薬局で薬を処方してもらう必要があります。業務災害の場合、治療にかかる医療費の全額が労災保険から給付されるので自己負担はありません。通勤災害の場合、一回だけ200円を自己負担する必要がありますが、それ以外は自己負担なしで治療を受けることができます。
なお、労災で病院に行く場合、どの病院に行ってもよいわけではなく、労災保険指定医療機関に行く必要があります。近所でどの病院が労災指定の医療機関か調べるための検索サービスが以下の厚生労働省のページで公開されています。
会社を休んだ場合の給付
労働災害でけがや病気になった場合、会社を休んで療養に専念する必要があるかもしれません。ただ、療養期間が長期間になりその間給料が全部または通常より低額しか支払われなくなってしまうと労働者の生活は苦しくなってしまいます。このような場合に、休業補償給付(業務災害の場合)または休業給付(通勤災害の場合)という給付を受けることができます。休業(補償)給付の概要は以下の通りです。
- 労働災害によるけがや病気の療養のため会社を休み、かつ、給料を受けられなくなった日の4日目から支給
- 3日目までは労災保険側ではなく会社側で補償
- 給付額は1日あたりおおむね給料を日額に変換した金額の60%程度
- 休業時に会社から全額または通常の給料の60%未満しか支払われていない場合に支給される(それ以上の給料が支払われている場合は労災保険からは支給されない)
療養期間が長く症状が重い場合の給付
労働災害によるケガや病気の症状が重く、場合によっては1年6か月を超える長期にわたって療養するケースもあります。そのような状態に該当すると労働基準監督署長が認定すると上で紹介した療養(補償)給付の代わりに傷病補償年金(業務災害の場合)または傷病年金(通勤災害の場合)が支給されます。傷病(補償)年金の概要は以下の通りです。
- 労働災害によるケガや病気の療養を始めてから1年6か月になるがまだ治療を継続中であり、法律で定められている傷病等級の1級から3級に該当する場合、支給される
- 支給額は1年あたり傷病等級に応じて給料を日額に変換した金額のおおむね以下の日数分が支給される
- 1級:313日分
- 2級:277日分
- 3級:245日分
障害が残った場合の給付
労働災害によるケガや病気について、休業(補償)給付や傷病(補償)年金をもらって治療を続けていたが、症状が固定化され障害が残ってしまうケースもあります。このような場合に支給されるのが障害補償給付(業務災害の場合)、または障害給付(通勤災害の場合)です。障害等級に応じて1級から14級に分けられ、1級から7級までは年金で継続的に、8級から14級までは一時金として一回だけ給付が支給されます。年金、一時金の支給額は給料を日額に変換した金額の以下の日数分になります。
- 年金の支給額
- 1級:313日分
- 2級:277日分
- 3級:245日分
- 4級:213日分
- 5級:184日分
- 6級:156日分
- 7級:131日分
- 一時金の支給額
- 8級:503日分
- 9級:391日分
- 10級:302日分
- 11級:223日分
- 12級:156日分
- 13級:101日分
- 14級:56日分
介護を受けている場合の給付
労働災害によるケガや病気により傷病(補償)年金や障害(補償)年金を受けている人がそのケガ、病気により介護が必要な状態となり、実際に介護を受けている場合、介護にかかる費用として介護補償給付(業務災害の場合)または介護給付(通勤災害の場合)が支給されます。介護(補償)給付の概要は以下の通りです。
- 支給の要件
- 傷病(補償)年金または障害(補償)年金を受ける権利があること
- 常時、または随時介護(※1)を必要とする状態にあること
- 介護サービスなどを提供している業者や親族から実際に介護を受けていること
- 病院などに入院していないこと
- 常時介護の場合の給付額(令和4年度)
- 業者を利用している場合
- 介護にかかった費用を全額(上限171,650円)支給
- 親族単独または業者+親族が介護している場合
- 介護にかかった費用を全額(上限171,650円)支給
- 費用が73,090円を下回っている場合、73,090円支給
(※1)常時介護、随時介護が必要な具体的な状態については厚生労働省発行の以下パンフレットに記載されています。
なお、介護(補償)給付の対象となった最初の月に介護費用を支出していない場合、給付はもらえません(2か月目以降支給)。
死亡した場合の給付
労働災害により労働者が死亡した場合に被扶養者などの家族の生活を守るために年金や一時金が支給されます。これが、遺族補償給付(業務災害の場合)または遺族給付(通勤災害の場合)です。残された遺族が生計を維持していた遺族がいるか等の条件により、年金または一時金で支給されます。
- 年金が支給される条件
- 死亡した労働者が生計を維持していた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹のいずれかがいること
- 遺族は以下の条件を満たしていること
- 妻:条件なし
- 夫、父母、祖父母:55歳以上
- 子、孫:18歳に到達する年度末までにあること
- 兄弟姉妹:55歳以上または18歳に到達する年度末までにあること
- 年齢条件を満たさない場合でも障害等級5級以上の障害にあれば条件を満たしたとみなす
- 年金の額
- 年金を受給する人と同じ世帯に年金を受給する資格がある人が何人いるかによって異なる
- 例えば、遺族が妻、15歳と12歳の子の場合は3人
- 4人以上:給料を日額に変換した金額×245日分
- 3人:給料を日額に変換した金額×223日分
- 2人:給料を日額に変換した金額×201日分
- 1人:給料を日額に変換した金額×153日分
- 65歳以上の妻、障害等級5級以上の妻の場合は175日分
配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹のいずれかがいるが、誰も年金を受給できる条件を満たさない場合、給料を日額に変換した金額×1000日分の一時金が支給されます。
葬祭を行う場合の給付
労働災害で亡くなった労働者の葬祭を行う場合、葬祭料が支給されます。葬祭料の額は以下の高い方の金額です。
- 315,000円+給料を日額に変換した金額×30日分
- 給料を日額に変換した金額×60日分